内分泌科
内分泌科
代表的なものに、糖尿病、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症などがあります。
内分泌の疾患は犬種・猫種・年齢・性別などによってなりやすい病気があります。
他の疾患と異なり、内分泌疾患の影響で食欲が出たり元気がある場合、通常は調子が良いと判断されることが多く、一般状態から飼主様が病気だと判断することは非常に困難です。
当院では定期検診などで実施した血液検査から、内分泌疾患の疑いを指摘しております。
また内分泌疾患が基礎疾患となり皮膚科疾患や整形外科疾患・消化器疾患を発症している場合もありますので、早期発見が重要となってきます。
初期の段階では症状がはっきりしないこともありますが、「いつもと少し様子が違うかも?」と思われたら早めの受診をおすすめします。
これらを組み合わせながら治療を行っていきます。
まず初めに飼い主様に詳しい症状のヒアリングを行います。
内分泌の疾患を疑うのに、飼い主様からの情報が非常に大切となりますので、少しでも気になる点がある場合には詳しく教えてください。
内分泌疾患をもつ動物では、そのほとんどにそれぞれの病気に特徴的な臨床症状が現れていることが多いので、そのあたりを細かく見ていきます。
大まかな状態が確認出来たら、飼い主様に検査や治療の提案を致します。
検査を行う場合、可能な限り負担の少ない検査を提案させていただきます。
検査・治療が高額になる可能性がある場合には、大まかな費用の説明も行います。
この病気は、副腎という臓器から分泌される副腎皮質ホルモンが過剰になる病気です。
犬で最も一般的に診断される内分泌疾患であります。
原因としては下垂体性、原発性(副腎腫瘍)、医原性に分類されます。
症状としては多飲多尿、多食、パンティング、腹部膨満、脱毛、軽度の筋力低下、元気消失がみられることがあります。しかし中には明らかな症状が見られず、定期検診時の血液検査等で異常が疑われる場合もあります。合併症として全身性高血圧、腎盂腎炎、膀胱結石、糸球体腎症、うっ血性心不全、膵炎、糖尿病、肺血栓塞栓症などがあります。
特に血栓症は時に突然死に繋がることもありますので、日々家で様子をしっかりと観察してもらい、早期に治療していくことが重要です。
診断には特徴的な臨床症状の他に血液検査、尿検査、レントゲン検査、腹部超音波検査を実施します。副腎皮質機能亢進症の可能性が高ければ、さらにACTH刺激試験(外注検査)などの特殊な検査を行います。また副腎皮質機能亢進症は下垂体性が一番多いとされております。そのため、必要に応じてCT・MRI検査を提案させてもらうこともあります。
CT・MRI検査を行う場合は、検査センターをご紹介させていただきます。
治療は検査結果や全身状態を考慮して、適量のホルモン抑制製剤を内服します。症状の改善には通常数週間~数か月かかり、症状が消失した後も内服は生涯にわたって必要です。
副腎に腫瘍がある場合は、転移病変や全身状態の悪化がなければ副腎摘出が選択されます。しかし手術に伴う危険性が高い場合は、内服薬によって体内のホルモン量を調節することを提案させていただくこともあります。
犬においてクッシング症候群に次いでよくみられる内分泌疾患です。
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンが不足することにより起こる病気です。
甲状腺ホルモンは、代謝を司るホルモンで、正常な成長および発育に必須であり、毛周期においても成長期を活性化します。不足する原因としては、甲状腺そのものが原因の場合や甲状腺にホルモンを作るように指令を出す脳が原因の場合に分けられます。
症状は、元気消失や活動性の低下、体重増加、その他にも皮膚病や外耳炎、被毛の変化、痒みを伴わない左右対称な脱毛といった特徴的な症状や、神経骨格筋症状(顔面神経麻痺やナックリングなど)、粘液水腫性昏睡といった命に関わるものまで様々です。
診断には臨床症状、身体検査所見、血液検査、甲状腺ホルモンの測定結果などを組み合わせて行います。
治療は、検査結果や全身状態を考慮して適量のホルモン製剤を内服します。治療開始後は定期的にホルモン濃度を測定し、適切な血中濃度を保てるように薬の量を調節します。症状の改善には通常数週間~数か月かかり、症状が消失した後も内服は生涯にわたって必要です。
8歳以上の高齢ネコでよく見られる、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる病気です。甲状腺機能亢進症の原因は主に甲状腺腫といわれております。甲状腺過形成、甲状腺腺腫、甲状腺癌があります。甲状腺のホルモンが血中に多く循環しているため、代謝が上がり、食欲旺盛なのに痩せていく、性格が凶暴になるなどの症状がみられます。その他にも嘔吐、多飲多尿、被毛の変化などがあります。病院で身体検査をすると心拍数の増加、高血圧もみられます。
甲状腺機能亢進症は触診において甲状腺を触知できることがある他に、甲状腺ホルモンを調べることにより診断を行います。
また、甲状腺機能亢進症では肥大型心筋症や腎不全、尿路感染症、全身性高血圧などの様々な合併症が認められることがあります。
治療法には、内科療法と外科療法があります。内科療法では、甲状腺ホルモンの働きを抑える抗甲状腺薬剤を内服します。外科療法では、腫大した甲状腺を切除します。しかし高齢猫では、過剰な甲状腺ホルモンにより血液循環が保たれ、低下した腎機能を見かけ上はカバーしてくれていることが多くあります。これが長期にわたるこの病気の管理の難しいところであり、まずは薬を投与して、甲状腺の働きを抑えても心臓や腎臓に問題が起こらないかどうかを見ていきます。そして問題がなければ、薬を継続するのかまたは手術に踏み切るのかを決断します。最近では甲状腺ホルモンの原料となるヨウ素を制限した食事が療法食として推奨されてきており、食事のみでの管理が可能な事もあります。
糖尿病は犬、猫両方に見られます。膵臓から分泌されるインスリンの作用不足に基づく代謝性疾患です。インスリンは生体で血糖値を下げる唯一のホルモンで、膵臓で産生・分泌されます。インスリンの作用が不足すると代謝が障害され、筋肉や脂肪組織の糖利用率が低下し、血糖値が上昇して尿中に糖が検出されます。もし治療せずに放置しておくと食欲不振や嘔吐が続き命の危険を伴う事もあります。その他にも糖尿病を罹患していることにより、腎臓病や尿路感染症、白内障、ブドウ膜炎、肝疾患や慢性膵炎などが発症しやすくなります。
イヌの糖尿病は中高齢のメスに多く、肥満が原因ではなく、免疫介在性疾患や膵炎が原因になっていることが多いです。これに対し、ネコでは、中高齢のオスに多く、肥満が糖尿病の原因になることが多いと言われています。また、他の病気が引き金になって発症することもあるため、基礎疾患の有無を検査する必要があります。
一般的な初期症状は、飲水量や尿量が増える(多飲多尿)、食欲旺盛になる(多食)、食べるのに痩せるなどです。症状が重度な場合には入院が必要となり、一日を通して血糖値の測定および調整が必要となります。症状に改善が見られれば自宅での管理が可能となります。その方法は以下のように大別され、これらの組み合わせにより治療していきます。
基本的にはインスリン療法が中心となり、生涯の治療が必要となります。非常に経過が良好な場合ではインスリン投与が必要でなくなる場合もありますが稀なケースとなります。